現代の日本社会では、どこにいってもエアコンが効いていて、冬は暖かく、夏は涼しくと室内は常に快適な温度に調節されています。しかし、長期間、エアコンの効いた部屋にいるうちに、われわれの体は知らず知らずに変調をきたしてしまいます。
とくに、長時間コンピューターを使って作業している人たちは、よく目の乾きを引き起こします。最近はドライアイという名で知られています。その場合、漢方薬のお茶を飲むと、目の乾きが改善することがあります。
たとえば、前回・前々回に紹介した菊花茶、枸杞子茶にも、そのような効果が期待できますが、今回は目の乾きを改善するもう一つの漢方茶を紹介します。それは羅漢果(ラカンカ)です。 羅漢果はウリ科の多年草つる性植物で、学名をMomordicae grosvenori Swingleといいます。中国特有の植物で、広西省の「桂林」辺りにしか育ちません。羅漢果は清王朝嘉慶年間(1769~1826年)、瑶(ヤオ)族の医師であった『羅漢』の名をとってつけられた植物です。
羅漢は、果実に薬効があることが分かっています。その効果はあらゆる病の予防と治療に効果を発揮する事がわかり、不老長寿の「神果」とまで言われるようになりました。 羅漢果は、清涼感があって甘く、一日、3~6gぐらいをお茶として飲むことにより、二三日後に、目の乾きが改善されます。羅漢果には毒性はなく、肺病の熱や咳、腸の不調、高熱にも良く効きます。消化を助け、解熱、去痰の作用があります。
そのほかにも、肝臓、膵臓に好影響を与え、血圧を正常に戻し、糖尿病にも効果があるとされています。羅漢果の成分は、ビタミンE(トコフェロール)、鉄、リン、マグネシウム、カルシウムなど、現代人に不足しがちなミネラル分を豊富に含んでいます。特に「ビタミンE」と「鉄分」が多く含まれています。
体中を健康にする羅漢果を一度ためしてみてはいかがですか。
中国漢方では人体の五臓六腑は五官と密接に関連すると考えられています。例えば、肝臓の具合が悪くなると、目に反映し、目がかすんだり、視力が低下したり、また夜盲症などを起します。腎臓の具合が悪くなると、耳に反映し、耳鳴りや聴力低下などを起します。心臓の具合が悪くなると、顔に反映し、顔
色が悪くなります。それらのことを引き起こさないため、普段の生活で五臓六腑を良くすることはとても大切です。中国漢方薬には五臓六腑を良くする生薬が沢山あります。
ここでは、山薬(サンヤク)という生薬を紹介しましょう。 山薬はヤマノイモ科(Dioscoreaceae)ナガイモDioscorea batatas Decne.の乾燥した塊状根です。日本ではその新鮮なものをやまのいも(山芋)、じねんじよう(自然生)と呼んでいます。まさに食薬両用、医食同源の代表的なものです。新鮮なもの、山芋 乾燥した生薬、山薬 山薬は脾を健やかにし、肺を潤し、腎を固め、肝を補い、精を益するなど、身体の各部を活発にする効果があります。それはステロイドと近似した成分が入っているためです。副作用は全
くありませんので、たくさん食べでも構いません。山芋の食べ方は日本の皆さんは慣れていると思います。乾燥させ生薬にした山薬はお茶のように煮て飲むことができます。また、粉にして、小麦粉と混合して、お菓子や中華マンにするなど自由に使ってください。
ところで、山薬はいろいろな漢方薬の処方に配合され、多彩な治療効果を発揮します。いちばん有名なのが八味丸、八味腎気丸とも言って他の七種の生薬と合わせて、肝と腎を健康にします。特に、腎虚(全身の老化現像)に使われます。 下半身が若返をすれば、夜2回も3回も行くようになる夜間尿が減り、上半身も若返り、白内障や老眼も良くなり、遠くなった耳もよく聞こえるようになります。 普段の食事や生活に、山薬を取り入れ、老化を遅らせましょう。
古代中国では薬として使用されていて、現在は食物として食べられているものが数多くあります。しかし、その一部は近年の研究で新たに素晴らしい効果が認められ、注目されています。今回はこのようなものの一つ、玉蜀黍(トウモロコシ)について、紹介します。
玉蜀黍は中国明朝の名医―李時珍(1518年 – 1593年)が編集した薬の専門書「本草綱目」に生薬として記載していました。 近年の研究ではトウモロコシの色素であるルテインとゼアキサンチンは、紫外線など有害な放射線から守るフィルターの役目をすると共に、抗酸化物質としてフリーラジカル(活性酸素)がもたらす細胞障害を防ぐ働きがあるとされ、目の機能強化、白内障や黄斑変性症などの眼病予防に役立ち、目の老化を遅らせます。
また、必須脂肪酸のリノール酸も多く含まれているので、コレステロールを下げ、動脈硬化の予防にも役立ちます。リノール酸は体の健康を維持するために大変重要な成分で、体内で合成されないため、食べ物から摂取しなければなりません。トウモロコシは、重要な摂取源といえます。
さらに、トウモロコシには、ビタミンが豊富に含まれています。特に『若返りのビタミン』と呼ばれるビタミンEはビタミンのなかで最も強い抗酸化作用を持ち、血行を良くし、冷え性、肩凝り、更年期障害の緩
和にも役立ちます。 トウモロコシは古くから漢方薬として、認められた歴史があると同時に、立派な食物でもあります。日ごろから摂取することによって、眼病の予防、目の老化を遅らせ、または、生活習慣病予防効果が期待できます。
(ハス)は中国やインドなどでは神聖な花として扱われる植物です。その根茎のレンコンは日本で馴染み深い食品のひとつであり、長い食用の歴史を持っています。中国漢方では、蓮の各部位はそれぞれの効
果があるため、区別して利用しています。今回は蓮の各部位の概要を紹介し、次回から各部位の効果及び利用法を説明します。
蓮はスイレン科ハス属の植物で、学名はNelumbo nucifera GAERTNです。 その地下の根茎はレンコンです。生で食用すると、肺を潤わせ、血行を良くするなどの効果があります。熟して食用すれば、食欲増進、滋養強壮の効果が期待できます。蓮の葉は中国漢方では荷葉(カヨウ)と称し、古くから安全な痩せ薬として、利用されています。
また、高脂血症などにも効果があります。蓮の果実は蓮実(レンジツ)と言い、皮を剥いてから更に果実中心にある胚を抜き取ったものは蓮肉(レンニク)と呼ばれ、鎮静作用、強壮滋養などの作用を有します。蓮実の中心から抜き取った胚は蓮芯(レンシン)と呼ばれ、強心作用、血圧を下がるなどの効果があります。同じ植物でありながら、各部位に蓄積された有効成分が違い、薬理効果も異なり、区別して利用すべきなのです。
(ハス)の根茎の蓮根(レンコン)は中国、日本などで馴染み深い食品のひとつです。中国漢方では熟したレンコンは「調中開胃、益血補髄、安神健脳」とされます。言い換えれば、胃腸をよくして、食欲の促進、血行の 促進、睡眠をよくし、老化を遅らせる効果があります。生のレンコンは「清熱潤肺、涼血行?」とされ、体に潤いをもたらし、?血を取り除く効果があります。 夏場は生のレンコンをミキサで汁にして、そのまま飲めま す。
また、レンコン汁は蜂蜜、生姜汁、ブドウ、梨の果汁などと混合してから飲むと、夏の清涼健康飲料になります。 レンコンから得られた澱粉はお湯に溶かすと、美味しいお菓子になります。 レンコンの節も立派な漢 方薬です。それを煎じて、飲むと、痔の出血を治療する効果があります。 近代の薬理研究ではレンコンに含まれる食物線維がコレステロール、グリセリンエステルと結合して、便と共に排出させる効果が認められ、脂質の吸収を抑制してくれます。つまり動脈硬化や高血圧予防効果が期待 できます。
また、レンコンにはタンニン酸が多く含まれており、止血の働きがあり ます。 レンコンを切った時に糸が引きます。これは納豆やオクラ、里芋 などに含まれる糖タンパク質ムチンによるものです。胃壁を保護し、タン パク質や脂肪の消化を促進します。 他には、レンコンに鉄分、カルシウ ム並びに微量元素、タンパク質、ビタミンなどを豊富に有し、高い栄養価 値を持っています。 レンコンはお年寄り、女性、子供の健康維持に大い に貢献できるというわけです。